マンガアシの教科書

22歳でアシスタントとして漫画業界入りし、プロ漫画家になったはいいけどヒット作無しで30年経過した男の告白ブログ/Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です

アナログアシ時代の思い出 その15「一回だけのヘルプ仕事」

 

これは、単発のお仕事、ヘルプアシのお話。


とある有名な漫画家さん。


ここでは、プロ先生(仮名)と呼ばせていただきます。

何本も映画化もされ、雑誌でも人気の高いベテラン漫画家さんだ。

 

どこから話がきたのか、まったく記憶がない。

たぶん、どっかで知り合った編集さんから
急に電話がかかってきたんだと思う。

 

仕事場は、近くだったのでチャリで行った。

古いコンクリートっていうかモルタルっていうか、

建築に明るくないのでわからないけど、
古い団地みたいなマンションが仕事場になっていた。

 

自宅がとなりの部屋らしい。

つまり

アパート2部屋借りて、

1部屋を仕事部屋にしていたということですね。

 

6畳とキッチン、トイレ、バスがある簡単な造りの部屋。

 

その6畳間に机が5個。
鉄格子のパーテーションなどを上手く使って
ステマティックに配置されていた。

それぞれ着席したまま会話ができ、
それでいてある程度プライベート感を出すという
これは配置のプロの仕事だ!

と僕は強く思った。

 

「こちらでお願いします」

と示されたデスクは、
デスクの右側は壁、

左側にはパーテーションによって作られた即席の壁が

ぴったりくっついていた。

だけど不思議と圧迫感がない。

いまでいうネットカフェのような心地よい閉塞感。

 

仕事開始。

アシ4人が背景描きや仕上げをする中で、

プロ先生は、

ヘッドフォンステレオでハードロックだかメタルだかを

ガンガンに聴きながらネームをしていた。

そして、一日目終了。


そもそもが、一日の約束だったが、

「もし明日、空いてたら来られますか?」

と聴かれたので

「はい、大丈夫ですよ」

って答えた。

でも、内心は「え~面倒くさいな~」と思ってました。

僕の性格的な問題ですね。

僕は元来、働きたくない人間なんです。
貧乏でもいいから仕事がない方がいい、

って思ってるんです。

 

今でも、

ドタキャンされたり、急きょお休みになったりしても

腹を立てず、

「ラッキー!今日は休みだ!」

って喜べるのも、この性格のおかげですね。


「じゃあ、これから担当さんと打ち合わせして、
夜、明日以降のことについて電話します」

って言われて帰りました。

何だかわからんけど、ばたばたしとるな~と思ってたら

電話がありました。

 

「ごめんなさい、明日はナシになりました」

「あ、そうですか」

「ていうか、原稿落ちました」

「へ?」

「今日一日ネームやってたんだけど、納得いかないんで、
もう一回最初からやり直します。
だから今回は、原稿落とします、ありがとうございました」

 

もちろん担当編集者さんと協議のすえ、

落とすことが決まったみたいですけどね。


ということで、連載一話分が休載となったようです。

すごいですね。

納得いくものが描けないから原稿落とすとか。

まさにプロですよ。

プロの厳しさを垣間見た一日でした。

勉強になりました。

つづく…

 

アナログアシ時代の思い出 その15 おわり

 

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