アナログアシ時代の思い出 その4
僕が最初にお手伝いしたロイホ先生(仮名)のお話。
ロイホ先生は、雑誌の中で、人気ナンバーワンだったんだけど、
原稿が遅いので有名でした。
いつも締め切りギリギリになっていました。
原稿を取りに来る担当編集者さんは、
会社にもどってからやる作業を
少しでも早くやるために、
ダイニングキッチンのテーブルで、
空いている原稿に写植を貼る作業をしていました。
※写植というのは、
フキダシの中の文字のことです。
いまはデジタルでカタカタッと打って終わりですが、
昔は、「写植屋さん」にフキダシの中の文字を発注して、
打ってもらって、印刷されたものをハサミで
フキダシの中にぴったり入るように切って
ボンドで貼りつけていたのです。
僕よりあとに入ってきたプロ経験もあるアシさんが
なぜ遅いか分析していました。
ロイホ先生が遅い理由は、
まず人物のペン入れが1本の線でズバッと引くのではなく
2本以上の線を重ねるように引くこと。
部分によっては、僕も、そういう線を引きますが、
1本でズバッと引くときは引きます。
ロイホ先生の絵は、ほとんどすべての線において、
「シャッ、シャッ、シャッ」
と2~3本以上の線で引いていたので遅いのです。
でも、それが絵柄に反映されていて、いい絵だったんですけどね。
(フォロー)( ̄▽ ̄;)
あと、ロイホ先生の漫画は、
1コマの中に2人~3人の人物がいることが多いのです。
アップのコマもあるのですが、
他の漫画家の先生に比べると、
引きのカメラで、数人が同時にいる絵を描くケースが多かったように思います。
とうぜん描くのに時間がかかります。
で、先生があみだした時間短縮の方法がコピペでありました。
先生は、
同じキャラが同じポーズをとっている絵を
執筆中の作品の過去の単行本から探し出して、
「3巻 p121 4コマ目 の幸子 80%」
というふうに原稿のコマの外に指示を書きます。
それを見たアシは、
該当する単行本を持って、チャリでスーパーマーケットまで走ります。
当時、ロイホ先生の仕事場には、まだコピー機が導入されていませんでした。
コピーをとるには、近所のスーパーマーケットに走るしかなかったのです。
で、幸子を80%でコピーして戻ってきて、
カッターで表情だけくり抜いて、
表情以外をコマ内に貼りつけるんです。
あとは先生が表情を描き入れるだけで完成!というわけ。
だけど、過去の単行本から探すのも先生自身ですからね。
その時間を考えると…
描いた方が速いんじゃね?という意見も…
まあ、どっちもどっちですかね~。
とにかく先生は、絵を描くの面倒だったんでしょうね~。
僕が初めてロイホ先生の仕事場に来た時、
先輩アシさんの机の上の、透明ビニールシートの下に、
くり抜いた表情だけが、戦利品のように挟まれていました。
この画像みたいな感じですね。
はじめて見た時は気味悪かったです。
何コレ!?気持ちわりぃ!!って。
でも結局、僕も同じように表情だけを挟むようになってしまいました。
つづく…
アナログアシ時代の思い出 その4 おわり
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